テレビやネットからは毎日のように「高齢者による危険運転や事故」のニュースが流れてきます。
ここ最近、耳(目)にすることが本当に多くなりましたね。
高齢化社会だから、その割合が多くなるのも必然なのでしょうか。
いえ、そんな理由のために生命や人生に関わる事態があってはなりません。
高齢者が免許更新を行う時の状況や検査で認知症と診断された場合、診断書はどうすれば良いのでしょうか。
また、ご本人やご家族など周りの方はどのように対応すれば良いのでしょう。
今回は「免許更新時高齢者のうち認知症の割合は?検査で認知症疑いとなったら診断書は?」と題してお届けします。
Contents
免許更新時高齢者のうち認知症の割合は?
高齢者のうち、運転が危険とされる割合はどのくらいでしょうか。
高齢者の年齢分布
さて、高齢者とは、おいくつからのことをいうのでしょうか。
世界保健機関(WHO)では65歳以上と定義しています。
日本の医療制度では、65-74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と区分しています。
昨今では、65歳から早くも高齢者扱いすることに違和感を感じる風潮になってきましたね。
令和3年10月1日現在の日本の総人口1億2,550万人のうち65歳以上人口は3,621万人で、総人口に占める割合は28.9パーセントとなっています。
そのなかでも後期高齢者の75歳以上人口は1,867万人で、総人口に占める割合は14.9パーセント。
これは、前期高齢者とされる65歳から74歳人口の1,754万人の14.0パーセントを上回っています。
免許保有者中認知症の割合
さて、75歳以上の高齢者が運転免許証を更新するにあたっては、「認知機能検査」を受検することが義務付けられています。
昨年末の75歳以上の運転免許証保有者は610万人にものぼります。
そのうち昨年の受検者226万人中、5万人に「認知症の可能性」という結果が出ました。
可能性と幅広でありながら、わずか2.2パーセントほどです。
率直な印象として、少ないのでは?と思いました。
なぜなら認知症の発症割合は、
75~79歳 | 約10パーセント |
80~84歳 | 約22パーセント |
85~89歳 | 約42パーセント |
と言われているからです。
認知症を発症された、もしくは不安をお持ちの方が、自主的に免許証を返納された結果として(認知症の可能性のある方が排除されたうえでなら)良いのですが。
運転免許を取得できる年齢は決まっていて学科試験や実技試験を通過しないといけないのに一度取得したら年齢制限や技能確認を厳しく設けずに保有し続けるというのは、安全を重要視していないように思われます。
なかには若年性の認知症の方もいらっしゃいますし、他にも機能面で早くに適性を欠く方もいらっしゃるでしょう。
免許保有者全員が自身の体力や反射神経、注意力の衰えを自覚し、自己を律することができる人ばかりではない以上、強制力はやむを得ないかもしれません。
それには、車のない生活の不便さを補完する体制は必須です。
免許更新時高齢者が検査で認知症疑いとなったら診断書は?
認知症かどうかを判断する認知機能検査や診断後についてご説明します。
認知機能検査とは?
認知機能検査とは、どのようなものでしょうか。
対象者は?
運転免許証更新期間満了日が75歳以上の運転免許保有者全員に義務付けられています。
時期は?
更新期間期限日の満了6月前から受検することができます。
内容は?
検査用紙に記入又はタブレットに受検者がタッチペンで入力して行います。
次の2種類があります。
てがかり再生
記憶力の検査です。
絵の内容を記憶したあと、採点とは無関係の別の課題をこなし、先ほどの絵についてヒ ント無しで内容についての回答を経て、さらにヒントを得たあとに回答します。
時間の見当識
検査時における年月日・曜日や時間を回答します。
検査終了後の流れ
検査結果は、次のふたつの区分ではがき等で通知されます。
認知症のおそれがない方
更新講習を受講して免許更新が可能となります。
認知症のおそれがある方
1.公安委員会から臨時適性検査か診断書提出命令があり、医師の診断が必要となります。
2.認知症であった場合は、聴聞等を経て①免許の取り消し、又は②効力の停止となります。
※75歳以上の方が信号無視等の交通違反をしたときには、上記同様に臨時で認知機能検査が実施されます。
免許返納
結果、免許返納となった場合、ご家族にあっては、ここからの対応は丁寧にお願いしたいところです。
それまでもご家族から運転が危なっかしいから止めるように再三言われてきて、抵抗し続けた方などは、拳をどこへ収めたら良いのかわかりません。
年を取るごとにプライドは高くそびえることがあります。
周りの方が鬼の首を取ったかのように「ほら、見たことか」と責めるのはやめましょう。
本人が拳を下ろしやすいようにそっとそっと寄り添ってあげてほしいです。
事故など起こしてしまったら余生が台無しになりかねませんし、ここでの対応がその後にも大きく影響しかねませんからね。
かつては、その方の運転により恩恵を受けたこともあったのではないでしょうか?
優しく自尊心を大事にして差し上げてください。
ご家族の見守りのなか、運転納めドライブを交通量の少ない安全な場所で短時間、短距離行い、免許証を受け取る代わりにこれまでの感謝を込めて表彰式を行うというのも素敵ではありませんか?
ご家族でピクニックで訪れたことのある思い出の地などでどうでしょうか。
免許返納その後
免許返納をしたら急に行動範囲が狭くなり、さらに認知力が低下し、介護や医療のお世話へまっしぐら!なんてことにはならないように、ここはかっこよく切り替えてください。
代わりの移動手段を利用し、新しい楽しみ方を見つけに行ってくださいね。
公共交通機関の利用(タクシー含む)
自治体によっては、免許返納された方には料金を優遇しているケースがあります。
免許証を返納された満65歳以上の高齢者に対して、シルバーパスを発行している地域もあります。
地下鉄や路線バスなどが一定期間無料で利用できたり、市内を循環するコミュニティバスを運営している自治体もありますので、お近くの役所で確認されてください。
運転経歴証明書
これまで運転免許証をご自身の身分証明としてご利用だった方は、返納後にも同様の効力のある証明書は必要でしょう。
銀行や郵便局、住民票の写し、印鑑登録証明書などの本人確認書類として運転経歴証明書の交付が可能となっています。
免許証と形や大きさは同じで、氏名、生年月日、住所、自主返納受理日などが表示されていて更新などはなく、一生有効となっています。
免許失効前に返納し、警察署や運転免許センターに5年以内に申請して交付を受けてください。
行政処分中や停止や取り消し処分の基準に触れる方は申請できませんのでご注意ください。
委任状等があれば、代理人による申請手続きも可能です。
運転経歴証明書を提示することにより、次の特典を受けることができます。
高齢者運転免許自主返納サポート協議会の加盟店にて
・タクシーやバスの運賃割引
・商品券の贈呈
・百貨店の宅配料金の割引
・美術館、飲食店の料金割引など
電動車いす・電動シニアカー
これは、歩行者と同じ扱いとなります。
ちょっとした段差も乗り越えられるなど機能面もそうですが、見た目の良い種類が増えています。
試乗やレンタルができるお店もあるようですのでお試しされてはどうでしょう。
誰も排除されることのない社会になっていってほしいものです。
高齢者の段階的選択肢
段階的に選択し、すぐに移動手段がなくなることへの拒絶間を減らすことでスムーズな返納への移行も可能となるのではないでしょうか。
サポートカー限定免許
サポートカー限定免許というものをご存じでしょうか。
「ペダル踏間違い装置などの安全運転支援装置が搭載されている車のみ運転できる」という限定免許です。
安全性に重点が置かれた対象車種が限定されており、国内各メーカーでの取り扱いがあります。
自動運転車
誰でも年を取りこのままでは移動手段には困る事態になり得るのですから、日本でも力を入れている分野で将来的に普及を目指しています。
現在は、2019年に改正された道路交通法により一定の条件下で自動運転が可能となっています。
無人バスの実証実験も始まっています。
お住まいの近くでご利用可能な移動手段はないでしょうか。
まとめ
誰も交通事故の被害者にも加害者にもなることがないように一日も早い変革が望まれます。
そもそも人間が作り出した便利なはずの物で人が傷つくことが後を絶たないなんておかしな話です。
診断書1枚で人生が狭くなるようなことはありませんように。
本来は、公的免許を保有することに問題が生じたのならば、それを引き継ぐ整備された環境が待ち受けているべきではないでしょうか。
今回は「免許更新時高齢者のうち認知症の割合は?検査で認知症疑いとなったら診断書は?」と題してお届けしました。